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気液平衡計算におけるウィルソン定数の温度依存性
東京理科大学教授
大江修造
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緒 言 気液平衡における活量係数を計算するWilson式(1)は、最も広く使われている式である。したがって,Wilson式定数を気液平衡データから正確に決定する必要がある。筆者は,Wilson式定数を800系について決定し,1975年に出版した(2).
2年後にDECHEMA(3)から同様の書(3)が出版され、今日に至っている。Wilson式が発表された1年後に,OryeらはWilson式定数に改良を加えて,別の形式のWilson式定数を導いた(4).
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Wilson式
下にWilson式を示す.
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ここに,γ1,γ2は成分1および2の液相における活量係数,x1,
x2は成分1および2の液相組成であり,Λ12
, Λ21はWilson定数である.
OryeらはFlory-Huggins理論にしたがって,次式を導いた.
ここに,v1L, v 2L
は成分1および2の液体分子容であり,Rは気体定数である.
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検討結果
Fig.1およびFig.2に検討結果を示した。Fig.1から分かるように,Λ12
, Λ21,λ12-λ11,
λ21-λ22には温度変化が見られる。
Fig.2から分かるように,Λ12
, Λ21,λ12-λ11,
λ21-λ22は温度変化は複雑である.λ12-λ11,
λ21-λ22を採用したからと言って、温度変化がなくなることはない.すなわち、λ12-λ11,
λ21-λ22を採用する意味はない.
λ12-λ11,
λ21-λ22の決定には、液体分子容を必要とする分,手数を要し、かつ液体分子容の精度に影響される可能性もある.
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Fig. 1 Temperature dependence of
Wilson parameters
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Fig. 2 Temperature dependence
of Wilson parameters
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結 言 Wilson式の定数として、原報に示された定数:Λ12
, Λ21を使用すべきである。理由はλ12-λ11,
λ21-λ22を採用しても温度変化は無くならないことと,決定に際し,液体分子容を必要としないからである.
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引用文献
(1) Wilson G. M., J. Am. Chem. Soc.,
86, 127, 1964. (2) Hirata, M., Ohe, S., et al., "Computer
aided databook of vapor-liquid equilibria", Elsevier, 1975.
(3) Gmehling, J., et al., "Vapor-liquid data collection",
DECHEMA, 1977. (4) Orye, R. V., et al., IEC, 57,19,1965. (5)
Wilson, G. M., et al., J. Chem. Eng. Data, 2014, 59, 1069.
(6) Berziane, M., et al., J. Chem. Eng. Data, 2013, 58,
492
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気液平衡計算法の詳しく解説してある
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大江修造
「物性推算法」
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気液平衡計算に必須
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「Excelによる気液平衡データ集
第2版」
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本サイトの運営者・大江修造のプロフィル
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1. 本サイトの運営者・大江修造の主要な研究実績
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〇工学博士
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東京都立大学院、1971年授与、指導教授は、気液平衡研究の第一人者であった故平田光穂教授、学位論文名「蒸留プロセスおよび蒸留塔の設計に必要な気液平衡の研究」 IHI且蜚C研究員を経て、東海大学教授、東京理科大学教授を歴任。この間、米国の蒸留研究機関FRI (Fractionation Research, Inc .)の客員研究員を経てコンサルタントに従事。
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〇気液平衡データ集 |
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1975年上梓の気液平衡データ集(主要著書1番)は、ウィルソン式定数を世界で初めて掲載し、DECHEMA(ドイツ)のデータ集より2年早く出版され,MITのReid教授の書評で極めて高く評価された。マチューセッツ工科大学の物性推算法の第一人者であるReid教授は世界で最も権威がある米国の化学工学学術論文誌の最終頁の書評欄で「最も印象的で美しい気液平衡データ集...」と評価していただいた。
"A most impressive and beautiful compilation of binary vapor-liquid equilibrium data....",
Robert C. Reid, Massachusetts Institute of Technology, "
AIChE Journal"(Vol.22, No.5), September,1976, page 957.
この書評のためもあって、同著は多くの化学工学技術者に親しまれた。Reid教授が他の共同執筆者とともに執筆した名著(初版)の3版以後、役に立つデータ集として、(主要著書2,3,4番)とともに紹介されている。
Poling, Prausnitz,O'Connell,
"The Properties of Gases and Liquids, 5th edition", McGraw-Hill, 2000
Table 8-1a Some Useful Books on Fluid-Phase Equilibria
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〇大江モデル
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気液平衡における塩効果の推算法として提案した溶媒和数を使う推算法は、米国化学会の招待講演で発表後、「大江モデル」として使われている。
招待講演は米国化学会の専門書 Advances in Chemistry Series に2回収録されている。Prediction of Salt Effect on Vapor-Liquid Equilibrium: A Method Based on
Solvation
Advances in Chemistry Series, No.155, 53-74 (1976) (米国化学会)
Prediction of Salt Effect on Vapor-Liquid Equilibrium: A Method Based on
Solvation II
Advances in Chemistry Series, No.177, 27-38 (1979)(米国化学会)
多数の引用例があるが、2例のみを示す。ジョージア工科大学のTejaによる大江モデル論文の引用が学術論文誌 Fluid Phase Equilibria, 219 (2004) 257-264に掲載されている。同様にウィスコンシン大学のPabloらによる引用が米国化学会の学術誌 Ind. Eng. Chem. Res. 1996, 35, 234-240に掲載されている。
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〇アングルトレイの発明
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運営者が発明し、勤務先IHI(株)で社長賞を得たアングルトレイを、米国の蒸留研究機関FRIで、客員研究員として実証試験を行った。圧力損失が小さく、高効率である性能を有し、化学会社10社以上で採用された。
研究開発の成果は以下の「石川島播磨技報」に発表した。
(1)蒸留塔用トレイの研究,9巻 495-504 (1969)
(2)多孔板塔の塔効率, 10巻 314-317 (1970)
(3)ベンチスケール蒸留装置による実験的研究,10巻 217-222 (1970)
(4)アングルトレイの性能試験,12巻 461-465 (1972)
(5)アングルトレイのスケールアップ試験,14巻 105-110 (1974)
米国のFRIでの試験の結果、アングルトレイの性能が優れていることが分かったので、米国の化学工学技術の専門誌の新製品の欄に1頁を使って、写真入りで
"Distillation Tray Features, Low ΔP, High Efficiency", CHEMICAL ENGINEERING, January 20, p.62, 1975
と紹介された。
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〇物性推算法
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本サイトの運営者はIHI鰍ノ入社後、直ちに物性推算の実務に、従事し、現場体験をもとに「物性推算法」(主要著書10番)を上梓した。同書は、実務体験をもとに、実務に従事する化学技術者を対象をとしている。そのために、類書である、"The Properties of Gases and Liquids"では取り扱われていない気液平衡推算式の温度特性などの記述や、純物質の蒸気圧推算法が記載されていて、広く国内や台湾・中国の科学技術者に使われている。同書の発行以後、「物性推算法」なる語が定着した感がある。
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2. 本サイトの運営者・大江修造が関係した国家プロジェクト
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経済産業省の蒸留技術国家プロジェクト2006に審査委員長として参加した。
「内部熱交換による省エネ蒸留技術開発(HIDiC)」委員(敬称略)
分科会長 大江修造(東京理科大学)
分科会長代理 仲 勇次(東京工業大学)
分科会委員 小山 繁(九州大学)
分科会委員 齋藤熹敬(アルコール協会)
分科会委員 松田一夫(千代田化工建設)
分科会委員 緑 静男(ミヤコ化学梶j
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3. 本サイトの運営者・大江修造の主要受賞歴
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〇文部科学大臣表彰 科学技術賞(平成17年度)
〇化学工学会 国際功労賞(平成22年度)
〇米国化学工学会 (AIChE: American Institute of Chemical Engineers)
分離技術部門表彰(平成20年、日本人では初)
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4. 本サイトの運営者・大江修造の主要著書
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(1)"Computer Aided Data Book of Vapor-liquid Equilibria", Elsevier, (共著),
Elsevier, 全 970 頁中 829 頁執筆 (1976)
(2)"Vapor-liquid Equilibrium Data", Elsevier, 全782頁(1989)
(3)"Vapor-liquid Equilibrium Data at High Pressure", Elsevier, 全382頁(1990)
(4)"Vapor-liquid Equilibrium Data-Salt Effect", Elsevier, 全394頁(1991)
(5)「蒸留工学」講談社,頁数 200 (1990)
(6)「改訂5版 化学便覧 基礎編U 日本化学会編」(共同執筆)
7.輸送現象の熱拡散中の気体中の拡散(U-67〜U-70頁)丸善(2004)
(7)「分離のための相平衡の理論と計算」講談社, 全237頁 (2012)
(8)「蒸留技術大全」日刊工業新聞社, 全387頁(2017)
(9) 「改訂6版 化学便覧 基礎編U 日本化学会編」(共同執筆)
7.輸送現象の熱拡散中の気体中の拡散を担当丸善(2021)
(10)「物性推算法」データブック出版社、全426頁(2011)
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5. 本サイトの運営者・大江修造による主要データベース・ソフトウェア
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(1)Excel蒸気圧データ −アントワン式定数集ー
(2)Excelによる気液平衡データ集第2版
(3)Excelによる気液平衡データ集,NRTL式編
(4)Excelによる多成分系蒸留計算プログラム
(5)Excelによる多成分系蒸留計算プログラム(側流付)
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